記事を担当するのは「まだ」です。
~こんな人に読んで欲しい~
- 研究職になるか迷っている人
- 研究職を目指している人
- 最終的に大学教授まで目指している人
現在、地方の旧帝大で研究職として働いています。
研究に関しては、大学4年生のときに研究室に入ってからなので、かれこれ約10年ほど研究ばかりしています。
今回は、大学における昇任基準についてです。
大学では、助教 ⇒ 准教授(講師) ⇒ 教授 の順に職位が上がっていきます。
教授まで昇進するにはどういった条件を満たさなければならないのか気になりますよね。
今回は、実際に助教として働いている私の経験から
大学教員における昇任基準
について記載していきます。
研究職とは
研究職は学術的アプローチにより、これまでにない技術や理論を創出する仕事です。
研究職は「基礎研究」と「応用研究」に分類できます。
基礎研究
基礎研究は、まだ発見されてない未知の物質や原理を発見し、そのメカニズムなどを理論的に解明していく研究のことです。
基礎研究は、より学術的なアプローチが求められ、大学や国の研究機関で行われている場合が多いです。
応用研究
応用研究は、基礎研究により発見された知識を利用して、実用化に向けて発展させる研究です。
応用研究は、新しい物質や原理を利用して、製品やサービスをつくり出すため、企業で行われる場合が多いです。
昇任で重要なポイント4つ
大学教員には一般に、以下に示す教育・研究・地域貢献・組織運営の4つを求められます。
- 教育:授業や研究室の学生指導など
- 研究:実験や計算、学会発表、論文執筆など
- 社会・地域貢献:中学や高校への出前授業、学会委員活動など
- 組織運営:学内の委員活動、入試対応など
そのため、昇任基準は上記4つの総合点によって決まります。
大学教員は、助教 ⇒ 准教授(講師) ⇒ 教授 の順に昇進していきます。
昇進するには、「満たすべき条件」というものがあります。
今回は准教授(講師) ⇒ 教授に昇進する
ための「満たすべき条件」について詳しく記載していきます。
教育
まずは教育面です。
評価のポイントは「授業」と「学生指導」の実績です。
「授業」
「授業」では、その学部や学科で平均程度以上の科目数を担当しています。
大学にもよりますが、一般に年間4科目程度でしょうか。
各学部や学科で授業負担は平均化するため、自動的に4科目程度授業を実施することになります。
あまり教員間で差は生じず、特に心配する必要はありません。
「学生指導」
「学生指導」では、大学院生(博士前期(修士)課程)の学生を複数人指導し輩出した経験があるかが問われます。
ここでポイントは、学部生ではなく大学院生というところです。
大学院生に学位を取らせるためには、まず大学院生に研究室を選んでもらう必要があります。
人気のない研究室だと大変ですね。
また大学院生なので、一般に学生には学会発表を経験させる必要があります。
「授業」「学生指導」ともに、それほど厳しい条件ではないように思います。
教育面で差をつけるには…
教育面で他の教員と差をつけるのは難しそうですね。
とはいえ、、、
- 大学院の博士後期課程の学生を輩出
- 学生が第一著者の論文を出版
- 学会発表で表彰
などがあるとプラスに働きます。
研究
次は研究面です。
業績評価で最も重要な項目です。
評価のポイントは、
- 「著書、学術論文」
- 「学会発表、招待講演」
- 「受賞」
- 「特許」
- 「外部資金獲得状況」
です。
特に大事なのが「学術論文」です。
大学にもよりますが、地方大学では教授昇任の基準は論文20編程度だと思います。
30歳から毎年1編ずつ論文を書いても、50歳では20編書けます。
最近では年間論文を3編ぐらい書くのが当たり前になってきているので、7年ぐらいで基準を満たしてしまいます。そんなに高い基準ではないですね。
現在助教の私は30歳ですが、論文20編を超えています。
また論文の数とともに、論文の質も重要になります。
論文の質を測る指標の一つに「インパクトファクター」というものがあります。
分野によってインパクトファクターの値は異なるので、その分野でTop10%の論文をどれだけ書けているかは、重要な研究力指標になります。
なので、インパクトファクターの高い論文誌(NatureやScienceなど)に論文を掲載することは重要です。
また「外部資金獲得状況」も昇任にな重要です。
過去数年間でに300万円程度の外部資金獲得実績が必要です。
文部科学省からの科研費や、民間企業財団に助成金に採択されれば、クリアできる数字です。
要するに
大学としては、「論文を書いてくれる人」と「お金を稼いできてくれる人」を教授に就けたいということですかね。(笑)
社会・地域貢献
教育・研究に比べると、社会・地域貢献の昇任への影響はそれほど大きくありません。
社会・地域貢献とは具体的には以下のようなものです。
- 中学や高校への出前授業
- 学会の組織委員や論文編集長など
- 企業との共同研究や、製品化、実用化、特許など
どれも難しそう(すぐにはできなさそう)ですね。
社会・地域貢献はある程度経験を積んだ教員でないとできないため、助教などの若手にはそれほど求められません。
なので、業績の評価への影響(比重)も小さいです。
大学としては、若手にはまずは研究や教育の経験を積んでもらうということでしょうね。
組織運営
組織運営も社会・地域貢献と同様に、教育・研究に比べると昇任への影響は大きくありません。
組織運営とは大学を運営する上で必要な
- 「教学支援」
- 「学生支援」
- 「管理運営」
などの業務です。
大学には、教務委員、学生委員、入試委員、国際交流委員など様々な委員会があります。
一般に、准教授以上になるとこういった委員に所属し大学組織の運営に携わります。
なので大学に所属している以上、自動的に何らかの委員活動をする必要があります。
委員会は月に1~3回開かれる程度でそれほど負担は大きくないでしょう。(大変な委員もありますが)
組織運営は主に准教授以上の職位の教員が行うため、助教などの若手に任せる大学は少ないでしょう。
実際は...
これまで、教授昇任で重要なポイントを記載してきましたが、これらをすべて満たしていれば教授になれるわけではありません。
大前提として
教授のポストが空いていないと昇任されません。
また、地方大学等では、年功序列の風習が強いため、業績があっても年齢が若いと昇任されないことがよくあります。
なので、大学教員はより高い職位を目指して大学を異動するのが一般的です。
まとめ
今回は、大学教授になるにはどのような業績が必要なのかについて記載いたしました。
大学の昇任人事では主に以下の4つで評価されます。
- 教育:授業や研究室の学生指導など
- 研究:実験や計算、学会発表、論文執筆など
- 社会・地域貢献:中学や高校への出前授業、学会委員活動など
- 組織運営:学内の委員活動、入試対応など
最も重要なのが研究業績です。つまり論文数です。教授になるには最低でも論文20編は必要でしょう。
その他の評価項目は、特に意識しなくても自動的に業績ができてきます。
なので、論文をどれだけ書いているかが重要です。
しかし、論文数の基準を満たし、その他の項目(教育・地域社会貢献・組織運営)でも業績があったとしても、上が詰まっていると昇任されません。
さらに地方大学には年功序列の風習が強いため、業績があっても、年上の業績のない人が昇任されることがよくあります。
なので同じ大学に居続けるのではなく、他大学へ異動することで昇進することも考えることも大事でしょう。
大学教授になるための評価ポイント
- 学術論文20編以上
- 授業の実施・大学院生の輩出実績
- 中学・高校への出前授業や学会委員活動などの経験
- 大学組織を運営するための委員活動の経験