今回記事を担当するのは「まだ」です。
「まだ」は高校まで地元の田舎町で育ちました。
田舎といっても地方都市にはいまして、現在、地方大学の教育・研究職(助教)として働いています。
研究に関しては、大学4年生のときに研究室に入ってから修士課程・博士課程と研究を続け、かれこれ約10年ほど研究ばかりしています。
そんな研究人生で、何人ものポスドクを見てきました。上手く次のポストに昇進できた人もいれば、日の目を見ることなく大学を去る人もいました。
ありがたいことに「まだ」は20代で早々にポスドクを抜け出すことができ助教として働いています。
今回は「まだ」の経験から、、、
- ポスドクとは?
- ポスドクの現実
- ポスドクから抜け出すには?
などについて記載していきます。
研究職とは
研究職は学術的アプローチにより、これまでにない技術や理論を創出する仕事です。
研究職は「基礎研究」と「応用研究」に分類できます。
基礎研究
基礎研究は、まだ発見されてない未知の物質や原理を発見し、そのメカニズムなどを理論的に解明していく研究のことです。
基礎研究は、より学術的なアプローチが求められ、大学や国の研究機関で行われている場合が多いです。
応用研究
応用研究は、基礎研究により発見された知識を利用して、実用化に向けて発展させる研究です。
応用研究は、新しい物質や原理を利用して、製品やサービスをつくり出すため、企業で行われる場合が多いです。
ポスドクとは
まず始めにポスドクとは何かについてお話します。
ポスドクとは・・・
ポスドクとは、ポストドクターの略で大学院博士後期課程を修了後に就く、大学等の研究機関での任期付きの研究職のポジションのことです。
- 任期はおおよそ3~5年が多いです。
- 博士研究員とも呼ばれます。
- 日本全国にポスドクは約1万5000人います。
ポスドクも研究職なので研究をするわけですが、自分で考えた研究を自由にできるわけではなく特定のプロジェクトの遂行のために働きます。また、大学教員のように教育に従事することはできません。
ということで、ポスドクはあるプロジェクトの遂行のために雇用されるポジションで任期(3~5年)が終わると出ていく必要があります。
任期満了になり何度も研究機関を渡り歩くことも普通にあります。
正直、ポスドクは大変です。。。
ポスドクの人は皆、早い段階で任期の定めのない助教などのパーマネント職に就くことを目指して日々研究しています。
「まだ」は大学院博士課程を修了してから、ポスドク(任期付き)⇒助教(任期なし)⇒助教(任期付き)を経験しました。※ちなみに、任期なし⇒任期付きは特殊なケースです(笑)
「まだ」の周りでもたくさんのポスドクを見てきました。
それらの経験から「ポスドクの現実」「ポスドクから抜け出すには」について記載していきます。
ポスドクの現実
ポスドクのつらい現実について記載します。
現在、ポスドクの平均年齢は38歳です。
平均が38歳ということは、博士号を取得(28歳)してから10年経っても正規のポジションに就けていないことになります。
先に記載したように、ポスドクの任期は3~5年のため、その10年の間には、2〜3の大学や研究機関を渡り歩いていることになります。
転職が普通の時代とはいえ、ポスドクで何度も転職はキツイですね。
例を挙げると…
「まだ」が働いている大学の研究室には37歳の外国籍のポスドクがいます。
彼の場合、30歳を過ぎてから博士号を取得して、これまで大学を2つ渡り歩いていますが未だにポスドクです。
現在の大学では、プロジェクトの予算で雇用されているため、プロジェクトの状況によっては2年で任期が終了します。2年間で任期のない助教などになれないなら、また短期のプロジェクトを見つけてそこに従事することを繰り返さなければならず、不安定な状態です。
外国から奥さんも日本に連れてきて2人暮らしをしており、早く正規の職に就きたいと言っています。
しかし、任期のない助教や講師になるには、もちろん研究業績(論文、外部獲得資金)が重要ですが、年齢も重要になってきます。
要するに採用する大学としては、優秀な若い教員を採用しようとします。
年齢を重ねるごとに昇進のチャンスは減っているのですね。
一般に助教や講師になる年齢は35歳ぐらいのため、ポスドクで35歳を過ぎてくると助教や講師の正規の職に就くのは正直厳しくなります。
40歳までポスドクを続けて、結局、塾の講師になったという人も見てきました。
現在はポスドクの50%以上は35歳を超えている状況のため、安定するには大学以外の道に進まざる得ない人がたくさんいるということですね。
ポスドクから抜け出すには
さてここからは、どうやったらポスドクから抜け出せるかについて記載していきます。
「まだ」がこれまで見てきたポスドクで正規の教員職に就けている人に共通していることがあります。それがポスドクから抜け出す方法のヒントとなります。
ポスドクから抜け出す方法
①積極的に成果発信をする
成果発信とは具体的には、どれだけ学術論文を第一著者として出版しているかというすることです。要するに、研究業績が無ければポスドクから抜け出すのは厳しいということです。
どれだけ良い研究をしてても、そしてご自身がどれだけ優秀であってもそれを周りが知ってくれないと意味がありません。
教授から言われたことだけをするのではなく、課題解決のために自分で考え、実行し、結果を論文にまとめあげる。
このプロセスを早くできる人はそれだけ成果発信する回数も多くなりますから昇進しています。
②周りの教授の先生と積極的にコミュニケーションをとる
そして成果発信だけでは不十分です。
ポスドクを抜け出すためにもう一つ重要な要素は、積極的に周りの研究者とコミュニケーションをとることです。
各大学で、助教や講師を採用するかどうかの人事権を握っているのは主に教授です。
もちろん一番大事なのは研究業績ですが、いかに教授の先生と仲良くできているかも昇進には効いてくるということです。
大学教授も人間ですので、この人と一緒に働きたいと思う人を採用します。
積極的に学会に出て発表して、教授に名前と顔を覚えてもらっていると、正規の職に就けるチャンスが高まるでしょう。
全く話したこともない人を採用するのはリスクですからね。
稀に、大した研究業績がないのに、正規の教員職についている人がいますが、恐らくこの人たちはコミュニケーション能力が秀でた人達です。(笑)
研究職といえど一般社会や一般企業と同じです。上司と仲良くしてる方がいいように教授と仲良くできているは重要です。
博士号を取得した人達はみなプライドが高く、いつかはポスドクから抜け出せると信じて頑張っています。
しかし、35歳までポスドクを続けて、研究業績とコミュニケーション力に自信がないのであれば、大学の道を諦めた方が良いでしょう。
これに気づかず(気にせず)ずっとポスドクを続けていると、最終的にどこにも就職できず、彷徨うことになってしまいます。
こういったポスドクが日本にはたくさんいます…。
まとめ
今回はポスドクで35歳は厳しいのか、ポスドクの現実、ポスドクを抜け出す方法、について記載しました。ポイントを以下にまとめます。
- ポスドクの平均年齢は38歳
- 2〜3大学と渡り歩くのは普通
- 一番評価されるのは論文たが、コミュニケーション力も重要
- 35歳までに研究業績がそれほどなく大学教授の知り合いがいなければ、大学で任期なしの教員職に就くのは極めて厳しい
- 35歳を過ぎると大学以外の道を考えた方がよい