記事を担当するのは「まだ」です。
~こんな人に読んで欲しい~
- 研究職になるか迷っている人
- 研究職を目指している人
- 研究職のリアルなメリットが知りたい人
現在、地方の旧帝大で研究職として働いています。
研究に関しては、大学4年生のときに研究室に入ってからなので、かれこれ約10年ほど研究ばかりしています。
今回は、大学における博士課程進学のメリットをランキング形式で記載します。
修士課程に進む学生は比較的多いと思いますが、博士課程に進もうという学生はかなり少ないのではないでしょうか。
これまでの私の10年以上の研究職での経験から
博士課程進学
メリットランキング
について記載していきます。
Contents
研究職とは
研究職は学術的アプローチにより、これまでにない技術や理論を創出する仕事です。
研究職は「基礎研究」と「応用研究」に分類できます。
基礎研究
基礎研究は、まだ発見されてない未知の物質や原理を発見し、そのメカニズムなどを理論的に解明していく研究のことです。
基礎研究は、より学術的なアプローチが求められ、大学や国の研究機関で行われている場合が多いです。
応用研究
応用研究は、基礎研究により発見された知識を利用して、実用化に向けて発展させる研究です。
応用研究は、新しい物質や原理を利用して、製品やサービスをつくり出すため、企業で行われる場合が多いです。
博士課程とは?
博士課程とは
博士課程は、高度な専門性や研究能力に加え、研究者としての自立性を養う大学院の課程です。
一般に、2年間の修士課程(博士前期課程)を修了したのちに、3年間の博士課程(博士後期課程)に進学します。
博士号を取得するには、30単位以上の修得、博士論文の審査及び試験に合格する必要があります。
博士課程の進学率について
工学部における修士課程から博士課程への進学率は、平成30年において5.6%しかありません。
一方、学士課程から修士課程への進学率は36.3%です。
修士課程への進学率に比較し博士課程への進学率は極めて低いですね。
博士課程進学率は平成3年の8.9%から平成30年で5.6%と年々減少しています。
この博士離れは、日本の未来を考えると極めて深刻な問題です。
博士課程進学のメリットランキング
さて、私が実際に博士課程を経験して感じた「博士課程進学のメリット」についてランキング形式で記載します。
博士課程進学のメリットは以下になります。
- 自分の興味のある研究に集中し、その研究分野の専門家になれる。
- 将来、大学教員や企業(海外も含む)の研究職に就きやすくなる
- 就職の際、初任給が高い
- 自分の書いた論文を世界中の人に読んでもらえ、論文は永遠に残る
- 論理的思考力、主体性、課題発見・解決力などの社会に出て必要なスキルを身に着けられる
- ある程度英語が話せるようになる
第1位 自分の興味のある研究に集中し、その分野の専門家になれる
POINT
研究室に所属してある分野の研究に没頭すれば、その分野の専門家になれます。
日本では一般に博士課程は3年間あります。専門性は修士課程の2年間で高められるという意見もあるかもしれません。
しかし、修士課程の2年間と博士課程の3年間では学びの密度が違います。実際に私はそう感じました。
一般に、修士課程を修了するために、論文掲載は必要ありませんが(もちろん学内向けの修士論文は書きます)、博士課程を修了するためには、論文誌への論文掲載が必要になります。
論文の本数は大学によっても異なりますが、おおよそ3年間で2本以上でしょうか。
この点が、修士課程と博士課程で学びの密度が違うと感じた理由だと思います。
学術論文を掲載するには、これまでに報告されていないことを論文に書かなければなりません。当たり前ですが(笑)
従来研究でどこまで明らかにされていて、どこが明らかになっていないのかを把握し、課題を見つけ出し、新しいアプローチで研究に取り組まなければなりません。
論文を書き上げられるレベルになるまでには、それなりに時間がかかります。そのため修士課程の2年間で論文を書き上げるのは非常に難しいです。
3年間で論文2本書き上げるには集中して研究する必要があります。そうすれば、3年後には自然とその分野の専門家になっているはずです。
逆に、研究に興味がなく研究に集中できなければ、論文を書けずに終わり、博士号を取得できないでしょう。
第2位 将来、大学教員や企業(海外も含む)の研究職に就きやすくなる
POINT
専門性を身に付けて博士号を取得すれば、就職の選択肢が広がります。
大学教員や大手企業の研究職には高い専門性が求められます。
工学系の場合、博士課程修了後の就職先として、大学教員が20%弱、民間企業の専門職が70%程度です。
民間企業には博士課程の学生に対し、「自分の専門しかやりたがらず、扱いづらい」というイメージがあり、一昔前は博士号を取得した学生を採用したがらない傾向がありました。
しかし、こういった企業の博士課程に対するイメージも変わりつつあり、最近では博士課程を採用したいという企業も増えています。
また海外では、博士号を持っていないと研究者として認めてもらえません。
なので海外で研究者として働きたい場合は博士号取得が必須と言えるでしょう。
日本の企業に所属していて、海外の企業の研究者と議論する場合においても、自分が博士号を取得していれば対等に議論でき、メリットは大きいです。
第3位 就職の際、初任給が高い
POINT
専門性を身に付けて博士号を取得すれば、就職の際の初任給が高くなります。
博士課程修了後に民間企業に就職する際のハードルは下がりつつあると記載しました。
では、博士号を取得した人の初任給はいくらなのでしょうか。
ずばり以下のとおりです。
- 博士卒初任給: 30万円
- 修士卒初任給: 25万円
- 学部卒初任給: 22万円
業界にもよりますが、博士号取得者の年収は400~600万円になることが多いようです。
さらに博士号取得者は昇進が早く、3~5年で管理職を任されるケースもあります。
管理職になると年収1,000万円を超えてくるでしょう。
アメリカでは初任給で1,000万円を超えてきます。これは魅力的ですね。(笑)
大学では助教の年収は550万円程度です。
教授まで昇進すると1,000万円は超えてきます。
このように博士号を取得すると、初任給で日本の平均年収(450万円)を超える給料が得られるというメリットがあります。
また企業では博士号があると昇進に有利に働き、より裁量が大きい高位職に早く就くことができます。大学教員も同様に個人の裁量が大きく自由度が高いというメリットもあります。
第4位 自分の書いた論文を世界中の人に読んでもらえ、論文は永遠に残る
POINT
自分が書いた論文を世界中の人に読んでもらえ、論文は永遠に残るという点もメリットに一つです。
一般に博士課程では、筆頭著者として論文を2本以上書く必要があります。
論文はインターネット上で公開され世界中からアクセスされます。
自分のやった研究を世界中に人に見てもらえます。
さらに、論文は永遠に残り続けます。
もちろん自分が死んでもです。(笑)
企業では、自分が行った仕事(研究)を論文にまとめて世界中に発信するということはなかなかできません。
論文を書き上げるのは大変ですが、こういった経験をできるのも博士課程の特権と言えるでしょう。
第5位 論理的思考力、主体性、課題発見・解決力などの社会に出て必要なスキルを身に着けられる
POINT
博士課程を3年経験すると専門性に加え、論理的思考力、主体性、課題発見・解決力などの社会にでて必要となる汎用的なスキルも身に付きます。
研究とは何をするのかというと、
- 従来研究を調査し
- 課題を見つけ出し
- その課題を解決するためのアプローチを考え
- 仮説を立て
- 検証
- 考察
の繰り返しで課題解決を目指します。
さらに博士課程ではじっくり行える時間があります。さらに実験に失敗しても言い方は悪いですが責任を伴わないため存分にチャレンジできます。
こういった時間や責任に対する考え方は大学は企業とはだいぶ違いますね。
こういった経験を通して、主体性や論理的思考力が身に付いていきます。
多くの人は、博士課程を修了後、博士課程で行っていた研究をそのまま生かせる企業に就職すると思われているかもしれません。
しかし、実際はそういったケースは少数派だと思います。
多くの場合、就職した企業で大学で行っていた研究と同じことをすることはありません。
企業に入ると企業の利益となる研究(お金になる研究)を優先してすることになります。
なので、企業としては博士課程に大学時代に身に着けた専門性よりも、論理的思考力、主体性、課題発見・解決力なのスキルを求めています。
こういった力があれば、どんな研究であっても成果を出していけるからです。
第6位 ある程度英語が話せるようになる
POINT
博士課程の3年間を経験をすると、ほぼ100%英語でコミュニケーションが取れるようになります。
最近は、企業は英語でコミュニケーションができる人材を求めています。
これは研究を進めていく上で英語を必要とする機会が多く、日常的に英語に触れるからです。
- 英語の文献から情報収集をする
- 国際会議に出て英語で発表する
- 英語で論文執筆する
- 研究室の留学生と英語でコミュニケーションをとる
など様々です。
私「まだ」も最初は英語が苦手(TOEIC400点)でしたが、博士課程で色々なことを経験することで、英語の読み書きやコミュニケーションも問題なくできるようになりました。
やはり英語を必要とする環境に身を置くというのが、上達する一番の方法ですね。
まとめ
今回は、博士課程進学のメリットランキングについて記載しました。
日本では博士課程進学者が年々減少しており、問題となっています。
これは、博士課程に進学するメリットがない!とか、博士課程修了後に就職できるか心配…などと考えている人が多いのではないでしょうか。
最近は企業側の考え方も変わってきており、博士課程を修了しても企業に就職できるケースも増えてきました。
博士課程進学のメリット
- 自分の興味のある研究に集中し、その研究分野の専門家になれる
- 将来、大学教員や企業(海外も含む)の研究職に就きやすくなる
- 就職の際、初任給が高い
- 自分の書いた論文を世界中の人に読んでもらえ、論文は永遠に残る
- 論理的思考力、主体性、課題発見・解決力などの社会に出て必要なスキルを身に着けられる
- ある程度英語が話せるようになる